MENU
日本小児歯科学会第39回九州地方会大会および総会

記念講演

小児歯科治療で必要な心理的知識
―ストレスの無い小児歯科診療を目指してー

福岡歯科大学 成長発達歯学講座 成育小児歯科学分野
尾崎 正雄


1956年 福岡県に生まれる
1981年 福岡歯科大学卒業
1981年 福岡歯科大学小児歯科学講座入局
1982年 福岡歯科大学小児歯科学講座 助手
1992年 米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校客員助教授
1996年 福岡歯科大学小児歯科学講座 講師
1997年 福岡医療短期大学歯科衛生学科 助教授
2000年 福岡歯科大学 成長発達歯学講座 成育小児歯科学分野 助教授
2012年 同 成育小児歯科学分野 教授
     現在に至る

     日本小児歯科学会常務理事 専門医指導医
     日本小児口腔外科学会理事 認定医指導医
     日本外傷歯学会理事 認定医指導医
     西日本子ども歯科保健・健康会議 会長
     九州心身医学研究会 理事
     GCS認定プロコーチ

抄録
 本年度で退職するにあたって、このような形で講演をする機会を与えてくださって感謝いたします。私が小児歯科医を目指した40年前は、まだむし歯の洪水の真っただ中で、毎日むし歯の治療とメタルインレーの技工に明け暮れていた毎日を思い出します。ところが最近の新患の傾向は、外科的処置症例が年々増加傾向にあり、令和元年度の新患登録者995名の内、外科的処置患者は157名(内全身麻酔症例は26例)、外傷患者は167例であり、口腔外科的疾患者は新患患者の約1/3をしめています。その中でも正中埋伏過剰歯の症例は、約100症例となっており、外科的処置患者の50%以上です。過剰歯の発現頻度は、2~3%といわれおり、永久歯交換や口腔外傷、および前歯部齲蝕の発現により、乳歯列期に一般口腔エックス線撮影を撮影される機会が多くなっていることから、その埋伏過剰歯の症例も低年齢化する傾向にあります。また、コーンビームCT(CBCT)の導入により、導入前と導入後で患者動向や手術方法、診査方法に相違が出てきました。3次元的な位置確認により6歳以下の低年齢児に対しても負担の少ない摘出が可能となってきています。一方、小児への対応の立場からみると、低年齢児の外科的処置では、不快な処置による相当な情動反応がみられ、バイオリアクション(ストレス反応)を起こします。ちょっとでも不快なことが起こると、攻撃的な生体反応を起こし、内部行動と外部行動を引き起こしてしまいます。したがって、心理対応法には細心の注意をはらう必要があります。小児歯科では静脈内鎮静法や経口投与による鎮静法は難しいので、笑気吸入鎮静法や全身麻酔法が用いられます。外来手術では、小児は外科的処置を受けることを知っているので少しでも恐怖心を押さえるように心がけています。浸潤麻酔の方法としては、少しずつ麻酔薬を注入して行くこと大切です。私の経験上、最初の浸潤麻酔の良し悪しで、患児の診療拒否が起こるかが決まると考えてよいと思います。場合によっては患児が痛がる瞬間に刺入を中止し、落ち着かせることが大切である。また、麻酔が効いていない所に局所麻酔薬を追加するのではなく、麻酔が効いているぎりぎりの所を狙って刺入していく配慮も必要である。このように小児歯科治療や口腔外科治療では、患児への心理的なケアも大切になってきます。そこで今回の講演では、痛みのない小児歯科治療に必要な心理的対応法を中心に、低年齢での手術時に小児を怖がらせないテクニックについてお話したいと思っています。