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日本小児歯科学会第39回九州地方会大会および総会

特別講演

子どもの事故はなぜ起きる?子どもの特性を知って
事故予防に生かす

大阪大学大学院人間科学研究科安全行動学研究分野特任研究員
子ども安全ネットかがわ副代表
岡 真裕美

 

【経歴】
1980年香川県生まれ。
2002年奈良女子大学文学部卒業後 パナソニック株式会社(旧松下冷機株式会社)に勤務。結婚、第一子出産を経て2007年から国語教師として中学・高校に勤務。
2012年大阪府茨木市安威川の水難事故で、溺れていた中高生を助けに入った夫が川の深みにはまり、亡くなる。溺れていた中学2年生男子生徒も亡くなる。
2013年大阪大学大学院人間科学研究科安全行動学研究分野に入学。ヒューマンエラーについて学び、特に「子どもの事故予防」について研究。
修士号取得(心理学)後、特任研究員となり、子どもの事故予防の啓発活動、研究、発信を行う。


【抄録】
 子どもはケガをして育つ、と思う者は多い。実際に、過去のヒヤリハット経験を積み重ね、子どもたちは危険予測をするようになり、成長とともに事故を防ぐことができる。しかしながら、毎年0歳から14歳までの子どもの死因で「不慮の事故」は、先天的な病気を除き、常に上位に位置する。年々減少傾向にはあるが、現在でも毎年300人以上が亡くなっている。また、子どもは被害者のみならず、その他愛もない行動が、周囲の人間を危険にさらす可能性もある。
 子どもの多少のケガは許容したいものの、ひとたび事故が発生すれば、それが軽傷ですむか重篤な事故になるかは確率の問題である。命の尊厳の観点からも、また少子化の我が国の現状からも、防げる事故は防ぐべきと考える。
 また、子どもの行動は我々にとって予測不能なものが多い。急な飛び出しなどの危険行動でハッとした経験をした方も多いであろう。交通場面などで、子どもの行動に注意せよと度々言われるが、なぜ子どもは飛び出すのか、なぜ何度も注意をしていても止まれないのかといった、子どもの行動特性について説明される機会は稀である。しかし、その上で我々は子どもの動きを予測し、危険に備えるだけでなく、子どもが安全行動をとるための教育・指導が求められている。
 そうした際に子どもに対して、大人が「気を付けて」「よく見て」と言うことも少なくないであろう。その時点では声掛けに従う子どもたちであるが、実はこうした漠然とした言葉は小学校低学年までの子どもには伝わっていないことが多い。
 本講演では、
  ・子どもの事故件数、特徴
  ・子どもの特性(心理面、身体面)
  ・子どもの不安全行動に対する効果的な声掛け
等について、発達心理学、交通心理学等の知見から、子どもの不安全行動のメカニズムを知り、そこから大人が子どもを事故・ケガから守るために注意すべき点、効果的な声掛けについて考えたい。